中国の天洋食品製冷凍餃子による食中毒事件は日中捜査当局の意見が真っ向から対立し、解決の糸口が見いだせていない模様。中国製の米、野菜、肉、調味料を毎日食し、体中の細胞がほぼ mede in China に置き換わっているはずの私が、遅ればせながら今回の事件をまとめてみた。
■事件のポイントを振り返る
・中毒が起きた冷凍餃子:
兵庫県と千葉県の消費者が昨年末、天洋食品の製造した冷凍餃子を食べて中毒を発症。原因は餃子に混入した有機リン系殺虫成分のメタミドホス。この餃子は別々のコンテナ積みされ、それぞれ大阪港と横浜港へ輸出されており、出荷から店頭に並ぶまでまったく接点がない。そのため、中国での出荷までに混入されたと見るのが自然。
・中毒の原因はメタミドホス:
中毒を起こした餃子から検出されたメタミドホスは異常に高濃度で、残留農薬とは考えにくい。私が先日、取材したある食品分析の専門家も「残留農薬でこれほど高濃度のメタミドホスが検出されることは考えられない」と話していた。
・メタミドホスの入手経路:
日本では農薬として使用されておらず、一般の入手は困難。また研究用は純度の高い試薬。検出されたものは不純物が混じっていることから農薬用と見られる。中国でも農薬としての使用は現在、禁止されているが、実際には簡単に手に入る。
・中国で混入したと見るのが妥当:
この事件は、中国において故意あるいは過失によりメタミドホスが混入したと推測するのが妥当だろう。中毒事件以降に中国製冷凍食品から検出された殺虫剤は、残留農薬の基準値越えか日本の店舗内で使用された殺虫剤の成分で、今回の中毒事件とは切り離して考えなければならない。
・日本のメディアと消費者の反応:
中国製品の無差別撤去が相次ぐなど、日本の世論は極めてヒステリックな反応を見せた。「中国製 → 食中毒 → 危険 →不売不買」という思考の流れだが、この事件はあくまで天洋食品が製造した加工食品に発生したもので、中国製に一般化できるものではない。最初の項目が「天洋食品製」ならば合理的な判断。「原因も判明していないのに、安心して買えるわけがない!」という考えもあろうが、その理屈で中国製品が買えないのだとしたら、賞味期限が捏造されているかも知れないという理由で日本製品も買えなくなってしまう。
■事件解決は胡錦涛訪日前後に?
輸入元である双日食料の担当者や日本政府調査団が立ち入り検査を行い、日本の記者陣も工場内の撮影を許されたが、製造から梱包までの過程に重大な衛生問題は見つかっていない。中国当局が工場から押収した製品サンプルや包装袋に対する検査でも、メタミドホスなどは検出されなかった。だが、何者かが意図的に持ち込んで混入した可能性は排除できない。
事件発生から約1ヶ月、捜査を続けてきた中国公安部が2月29日、「メタミドホスが中国で混入した可能性は極めて低い」と発表した。春節(旧正月)明けに、製造元の天洋食品が記者会見で自己の責任を否定してからというもの、「もしかしたら、そういう結末になるんじゃないかなぁ」とは思っていたが、それでも「まさか、ぬけぬけとホントにそう主張してしまうとは・・・」というのが私の感想。彼らの思考回路は単純明快だ。「工場とサンプルの検査で問題は見つからなかった → 中国の問題ではない → 日本で混入したに違いない」ということ。
商社に勤めていた頃、国有企業を相手にしていた時を思い出した。能力がないのかやる気がないのか、原因究明がいつも適当、曖昧で、「うやむやにしたい」「責任を逃れたい」「個別の問題にしておきたい」という意図が見え見えだった。ここでの教訓は、中国の企業や当局が具体的な根拠を示さないままに「問題ない!」と言い張る時はたいてい問題があるということ。実際に殺虫剤などを意図的に混入した殺人事件も発生したり、使用が禁止されているはずのメタミドホスを満載したトラックが事故を起こしたり、工場の近辺でメタミドホス入りの殺虫剤を簡単に購入できたり、あやしさ全開の状況証拠には事欠かないのだ が・・・。
当局は以前から、中国製品の国際的なイメージと日本人の対中感情の悪化に神経を尖らせている。そのため、意図的に混入した“犯人”を探し出して、「この事件はこの“犯人”による個別の事件。中国製品一般は安全」として片付けるのかとも思っていたら、日本側に何の根回しもせずに突然、「問題がない」と発表し、日本の警察当局の顔に泥を塗りつけたことには驚いた。外交巧者の中国にしては実に稚拙だ。
そう思っていたら、産経グループのサイト「ZAKZAK」に興味深い分析記事が出た。公安部の「中国での混入はない」発言に対し、日本人の対中感情悪化によって4月に予定されている胡錦涛国家主席の訪日が台無しになることを恐れた外交部が、事件と日本側の反応について胡主席に直訴。報告を受けた胡主席は激怒し、公安部や国家品質監督検査検疫総局のトップを呼びつけ、叱責したという内容だ。日本人がヒステリックに叫ぶ問題などいい加減にやり過ごしたい公安部と、中国の国際的なイメージ失墜と中国への外交的圧力強化を恐れる外交部の対立の構図だ。信憑性は分からないが、図式としては非常に分かりやすい。
中国では目下、5年に1度となる全国人民代表大会の開催期間中であり、事態が進展する見込みはないが、胡錦涛の訪日前後に何か動きがあるかも知れない。
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