先日、あるテレビ番組で温家宝総理が各地の帰省客を見舞った時の様子を再放送していた。それを見ながら、私と妻がこんな会話を交わした。
「結局はパフォーマンスでしょ?総理が行ったところで、何ら具体的なことができるわけじゃないのにねぇ・・・。それに、現地へ行くといっても総理1人だけじゃなく、何十人というお付きが従うわけで、交通機関がこんな混乱状態の時に各地を回れば、帰省客にも影響が出るんじゃないかなぁ?」
「総理が顔を見せることで、帰省客の不満をなだめる効果があるし、何よりトップが行かないと現地の担当者がしっかりと働かないから、やっぱり現地へ行くのは大事だよ」
緊急事態が発生した際、トップが現地に赴き、事態を重視してしかるべき対策を講じているという態度を見せる。これが政治的に重要であるのは中国でも同様だ。ただ日本と少し違うのかなと思うのは、現地の担当者にトップの態度を見せることも目的に含まれていることだ。総理が北京で座ったままでは下の者が本気になって動かないからだ。状況や対策について質問され、中途半端な対応しかしていないことが知れれば、現地の担当者にとっては一大事だ。
テレビでニュース番組を見ていると、総理が農村を訪問している様子が流れることがある。表面上は国家指導者が農村問題に関心を持って適切な対策を取っているおかげで、農民がみな幸せに暮らしているという“宣伝”でしかない。しかし、訪問を受ける地方の官僚は少なからぬ圧力を感じているはずだ。手落ちがあって総理から叱責でもされようものなら、昇進にも影響しよう。そのため現地では、総理に都合のいいところしか見せたがらないのだが、総理の方も心得たもので、急に「水が飲みたい」と言って予定コースから外れ、貧しい村を見学するということもあったそうだ。国家指導者の動向を伝える“宣伝”ニュースから、政治的な裏事情を想像してみるのも面白いかも知れない。
■ビジネスでもトップの態度が重要
トップがはっきりとした態度を見せないと現地の担当者が動かないというのは、ビジネスをする際も同じだ。若いスタッフが現地メーカーにいくら指示や要求を出そうとも適当にあしらわれてしまうのだが、董事長(会長)や総経理(社長)クラスの人が直接現地に赴いて要求をすれば事態が直ちに動き出す、ということが起きるのだ。私も前職でたびたび経験したことだし、妻は今でもメーカーのこうした態度にしばしば悩まされている。
トップが特別な交渉術を駆使しているわけではない。トップが直接要求したという事実が、相手にとってはとりわけ重要らしい。しかし若いスタッフにとっては、メーカーに要求のひとつも通す能力がないとトップから見られかねない。地団駄のひとつも踏みたくなる瞬間だ。
ちなみに妻は現在、あるアパレル商社の経理(課長)職。妻がこの会社に転職するに当たり、メーカーへ指示するためにはある程度の肩書きがあった方が便利だろうという、董事長の配慮から用意された役職らしい。


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