9月11日、中国国家統計局は8月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比6.5%増になったことを発表した。今年7月の前年同月比5.6%を上回り、96年12月以来で最大の上昇幅となった。1月から8月の累計も3.9%で、当局が警戒線としている3%を引き続き上回っている。
CPIの急上昇は食品価格が原因だ。食品価格全体で18.2%、特に豚肉など肉製品で49%も上昇しており、これがCPI全体を押し上げることとなった。サービスなど非食料品価格が0.9%の上昇で、前日に発表された生産者物価指数(PPI)も前年同月比2.6%増に留まっている。
最近はどこへ行っても値上がりに話ばかりだ。私がよく通っている会社近くのパン屋でも、クロワッサンが5.5元から6元へ、さらに6.5元へと値上げした。コンビニのおばちゃんが値上げに不満をもらした買い物客に、「今どき値上げしない商品の方がおかしいわよ」と言い放っていたのが印象的だった。
庶民の生活に直結する食品価格の上昇は、社会不安を増幅しかねない。当局が必死になって食品価格の上昇を抑えているのは、来月開催される第17回共産党大会を前にして社会不安が党批判へと向かうのを懸念してのことだ。
中国の新聞紙上で「通货膨胀(インフレーション)」の文字を見ない日はない。中国人民銀行は今年に入って、5度の利上げと7度の預金準備率引き上げを実施。しかし焼け石に水の状態。中国の市場は流動性が過剰、つまりお金がジャブジャブに余っているからだ。
上海株式市場の総合指数は年初の2700ポイントから90%以上も上昇。5200ポイントを超え、今のところ下落する要素はまったく見られない。不動産価格は8月の全国70都市における不動産価格で8.2%の上昇。上海市前書記の陳良宇氏が失脚して以来、不動産価格が安定していた上海でも、5月の労働節休暇後、じわじわと値が上がってきている。
中国当局にとって運の悪いことに、米国市場がサブプライムローン問題で動揺しており、連邦準備制度理事会(FRB)も利下げを始めている。各国経済もその影響を受ける中で、リスクと低金利を嫌った資金が影響の少ないと見られる中国へ向かい、流動性がさらに過剰となる可能性がある。
中国財政部(省)は8月29日、6000億元の特別国債を発行した。今年6月末に開かれた全人代常務委員会で承認された、1兆5500億元に上る国債発行案の実施第1弾になる。発行で得た資金を外貨準備として保有する外貨と交換。海外で運用すると見られている。
私たち日本人の頭には「国債=借金」と刷り込まれてしまっているのだが、中国政府は借金をしなければならないほどお金に困っているわけではない。その逆だ。過剰な流動性を抑えるため、国債によって当局が市場の資金を吸い上げ、海外に持ち出してしまうわけだ。
しかし今回の特別国債は、財政部が中国農業銀行に発行した国債を中国人民銀行が引き受ける形になっており、市場の流動性にはあまり影響しないと見られている。とすれば、当局に残された手はもはや人民元切り上げしか残されていない。しかし当局自身が一番よく理解していることだが、これは諸刃の剣だ。人民元が急激に切り上がれば、ドル決済時の輸出価格が上昇する。そうなれば付加価値の低い製品の国際競争力が低下し、輸出主導型の中国経済に大打撃を与えてしまう。
8月20日、国家外国為替管理局は個人投資家による香港株式市場への直接投資を解禁すると発表した。これまで個人投資家は、年間5万ドルの外貨購入限度の範囲で「基金(ファンド)」を買うことでしか海外投資ができなかったのだが、香港株式への投資が無制限で認められるというのだ。中国のマスコミでは「香港直通车(香港直通列車)」と呼ばれている。今のところ天津市浜海新区の中国銀行で開設した口座に限られるが、うまく行けば上海など他の大都市でも適用される可能性が高い。これまでは外国の投資が一方的に流入するだけだったのが、これからは中国から外国へ向かう流出が加速する。これが、中国市場の流動性にどれだけの影響を与えるのかに注目したいところだ。
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