戦前の租界文化の影響か、お茶が「主飲」の中国において、上海ではコーヒーを飲む人が少なくない。
上海でコーヒーはちょっとした贅沢品である。お昼が10~20元で済ませられる一方で、喫茶店のコーヒー1杯が20~40元もするからである。だがそれにもかかわらず、コーヒーはホワイトカラーの嗜好品として定着している感がある。
私の周りには、私のように1日4~5杯も飲むほどの中毒者はいない。仕事中に頭をすっきりさせたい時や、お出掛けした先で一休みする時などに、たまに飲む程度がほとんどのようだ。
市内の大型スーパーに行けば、インスタントコーヒーが手に入る。ここでは、「雀巢(ネスカフェ)」がコーヒーの代名詞となっている。大手スーパー「カルフール」では、おなじみの「ゴールドブレンド」が100g入りで48元だった。瓶入りもあるが、ミルクや砂糖が配合され、1杯分ずつ小分けされている袋入りのインスタントコーヒーも多い。たまに飲みたいだけ人にとっては、便利だからだろう。また日系の百貨店やスーパーへ行けばと、マキシム、UCC、ブレンディなどの日本から輸入されたインスタントコーヒーも簡単に手に入る。
上海には星の数ほど喫茶店がある。その中でもっとも知名度があり、店舗数が多いのは、黄色い看板の「上岛咖啡(UBC COFFEE)」である。ネスカフェと並び、中国大陸にコーヒーを広めた立役者と言えるだろうか。名前だけ聞くと日本企業のようだが、40年の歴史を持つ台湾企業である。中国では創業者同士が「上島」の商標をめぐって裁判沙汰になっているようだが、それはともかく、「上島珈琲」の店内は非常に高級な雰囲気を漂わせており、その高いコーヒー代のほとんどが柔らかいソファ代で占められているのではないかとすら思える。喫茶店というより立派な洋風レストランであり、コーヒーやお茶の他にステーキやスパゲッティ、中華の定食やめん類、果ては「火鍋」まで幅広くメニューを取り揃えている。
日本の「珈琲館(KO:HI:KAN)」から枝分かれしたフランチャイズ店「真锅咖啡馆(MANABE COFFEE)」も有名だ。上海全域でおよそ40店舗を展開している。コーヒー豆の提供も含め、現在は日本の「珈琲館」と何の関係もないらしい。高級な雰囲気の「上島珈琲」とは違って、日本にあるような軽食喫茶といった感じ。だが価格はそれほど変わらない。
上海に住む日本人の悩みは、おいしいコーヒーになかなか出会えないということである。私もよく喫茶店に行くのだが、おいしいと思うコーヒーに出会ったことはほとんどない。それは、「上島珈琲」や「真鍋珈琲」も例外ではない。香りもしないやたらと苦いだけのブレンドコーヒーや、ミルクとシロップがたっぷり入った、恐ろしいまでに甘いカフェラテを飲まされるのである。日本と同等、あるいはそれ以上の料金を支払ってのこの体たらく。180円と格安なドトールのブレンドコーヒーの方がよっぽどおいしかった。だから私は、喫茶店でしばしばコーヒー以外の飲み物を注文するのである。
上海人はかなりの甘党なのかも知れない。日本人にはとても考えられないことだが、上海人はお茶にも砂糖を入れて飲む。陝西省出身の私の彼女も、喫茶店でポット入りのお茶を注文した場合には、砂糖を入れながら飲んでいたりするから、上海に限ったことではないようである。街中で売られているペットボトル入りのサントリー・ウーロン茶は「無糖」と「低糖」に分かれているが、それは他の種類・ブランドのペットボトル入り茶飲料でも例外はない。袋入りのインスタントコーヒーにも砂糖がたっぷり入っているし、缶コーヒーも日本に比べかなり甘めだ。
本当においしいコーヒーはブラックでも十分に飲めるものだと思う。砂糖やミルクを大量に入れなければ飲めないというのは、上海人の味覚の問題以上に、上海に本物のコーヒーが普及していないことが問題なのである。
もちろん、上海でも探せば上質のコーヒーを提供している喫茶店はあるだろう。しかしそうしたカフェがたまたま近所にあればよいが、くつろぎのひと時のために、意外と広い上海の街を、常に混雑している交通機関に乗って旅することになるのであれば割に合わない。買い物の途中などにたまたま見つけカフェに入ったとしても、価格の張るまずいコーヒーを飲まされる可能性の方が高い。
その点、スターバックスへは安心して入ることができる。日本にいた頃は割高なために見向きもしなかったが、ここ上海では儲けさせっぱなしである。「星巴克(xīng bā kè)」と音訳されるスターバックスは、大型ショッピングセンターや高級ホテル、繁華街、果ては「豫園商城」など、上海におよそ50店舗を展開しており、外国人比率の最も高い場所のひとつとなっている。店員は若者ばかりで、コーヒーやサービスについての研修を受けており、店内も清潔で落ち着くのだが、コーヒー1杯を飲みたいだけなのに「サンドイッチも一緒にいかがですか?」などと毎回聞かされる営業トークには、煩わしさを感じることがある。また、店内のお客にしばしばオススメの新コーヒーが試飲として配られるサービスがある。価格はアメリカンのトール(中)サイズで20元、同じサイズのカフェラテでは25元だから、日本とさほど変わらない。
さてこんな上海には、日本人&日本企業がコーヒー豆を片手に続々と進出してきている。
最初に紹介したいのは、「外灘(バンド)」から北へ蘇州河を渡ってすぐの所に店舗を構える「アルトノイラントコーヒー(アルトコーヒー)」である。お店のサイトや店長ブログから伝わってくるのは、大阪の老舗珈琲店で学び、「コーヒーソムリエ」を自称する店長の、コーヒーに対する情熱とこだわりだ。コーヒー豆の無料プレゼントを取り寄せたら、「上海で失敗しない、おいしいコーヒーのコツ!」と題する、ひもで綴じられた自作の冊子までご丁寧に付けてくれた。「アルトコーヒー」で取り扱っているおよそ20種類のコーヒー豆は、200gで50~100元となっており、電話やインターネットから注文すれば10元の宅配料で宅配してくれる。支払いは代金引換となる。注文後に焙煎し、挽きたてを密封せずに送ってれるので、届いた瞬間から部屋にはコーヒーの香り部屋中に漂い、フィルターで落とすとフワッと柔らかな香りが立ち上る。うまい!・・・至福のひと時だ。ちなみに、この店長は私と同じ年齢だ。
コーヒーやお茶の通販で有名なブルックスコーヒーも、「咖啡桑普莉(カフェ・サプリ)」という名前で進出している。手作りのにおいがするアルトコーヒーと違い、日本製ですべて一杯分ずつドリップ・パック詰めされている。ドリップ・パックは開封してそのままカップの上に載せ、お湯を注ぐだけの簡単さで、器具を用意する必要がない。商品は「ヨーロピアンブレンド」「モカ」「チョコレート」の3種類で、値段は50袋210元(1杯あたり4.2元=約60 円)からとなっており、 「1杯あたり19円(税抜)から」をうたっている日本に比べれば割高ではある。やはり宅配してくれるので、代金引換で受け取る。
私はまだ注文したことはないが、日本人や韓国人が多く住む市西部の「古北新区」にも「カフェ・ド・カルモ(上海珈露夢)」という自家焙煎コーヒー店がある。2002年12月開店というから、上記2店舗に比べれば老舗になる。他にも、オフィス向けとして「德欧仕(ダイオーズ)」コーヒーがある。1ヶ月に1袋30元コーヒーを10袋以上購入しなければならない条件だが、コーヒーを沸かす機械や備品を無料で貸し出してくれる。機械にコーヒー豆をセットし、水を注げばあっという間に10杯分のホットなコーヒーができあがり、そのままその機械で保温しておける。以前、うちの会社でも買っていたのだが、この小さな会社で日常的にコーヒーを飲むのが私一人しかおらず、もったいないので結局やめてしまった。・・・
こういったお店のおかげで、私たちは上海でコーヒー生活を満喫できるわけである。
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関連エントリー:「珈琲同志 -オフィス向けコーヒー後日談-」
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<追記>11/4
関連リンク:「FujiSankei Business i.」の記事「コーヒー党、急増 スターバックス、1年内に100店増」


御無沙汰して居ります。
小職が上海勤務を開始した頃(2002年春)、開設したばかりの狭い事務所内では、所謂、個室(会議室・総経理室etc.)と成るスペースが有りませんでした。
プライド・面子を大切にする中国人のスタッフを、叱ったり、注意を促す場合、会社の近くの "スタバ" に連れ出して、二人きりで "お説教" をしたモノでした。
当時、2500元位の給料の人達に、50元位の珈琲をご馳走しながら叱るのですから、ニコニコして良く聞いて呉れた事を懐かしく思います。
投稿情報: Free Flight | 2006-10-28 23:07