一口に「中国語」と言っても、その内実は複雑だ。公共の場で使用され、学校で国語として教えられ、また外国人が中国語として勉強する中国の標準語「普通话(pǔ tōng huà,普通語)」は、中国北方地域の方言と北京語の発音を基準として作られているが、ここ上海では生活の多くの場面において上海語が多用されている。地元のテレビ局でも普通語が基本だが、一部に上海語のコメディ番組なども存在する。英語や日本、韓国語も飛び交う国際都市でありながら、上海語ができなければ結局よそ者という感じが拭えない。
中国語は大きく7つの方言に分類される。北方方言(官話方言,北は黒竜江省から南は雲南省、貴州省まで)、呉方言(上海市、江蘇省南部、浙江省)、湘方言(湖南省)、閩方言(福建省、台湾)、贛方言(江西省)、客家方言(江西省南部、福建省西部、広東省北部)、粤方言(広東省、香港)であり、お互いコミュニケーションが不可能なほど異なっている。漢字という表意文字がなければ、中国はとっくの昔にヨーロッパのような分裂した大陸となっていただろう。北方方言以外の6つの方言はすべて長江から南の地域で話されており、たとえ同じ方言区内であっても、100kmも離れれば方言同士が全く通じなかったりする。呉方言には上海語や蘇州語、杭州語、温州語などの方言があり、またこの狭い上海でも地域によって微妙に異なるらしい。上海人の会話によくよく耳を傾けてみれば、確かに語調が何となく異なっている気がしないでもない。
もともと上海は、「城隍廟」や「豫園」のある県城を中心とするしがない漁村でしかなかった。浦西の黄浦区を楕円形に走る「人民路」と「中華路」の内側地域である。19世紀に欧米諸国の租界が設置されて以降、周辺から多くの中国人が流入する中で、もともとの上海語に地方方言や英語の語彙が加わった一種のクレオール(混成的)な言語として現在の上海語がある。だから、生粋の上海語をしゃべる生粋の上海人はごくわずかである。
私が広州に留学していた際、私自身の語学力もまだまだ未熟だったとはいえ、広東人のなまった普通語の聞き取りには相当苦労した。それに比べれば上海の普通語水準は高く、発音もきれいだ。逆に小さな頃から普通語教育を受けて育っているため、上海語をうまく話せない上海育ちの若者も少なくなく、最近では方言としての上海語の衰退を嘆く声が聞かれ、学校のカリキュラムに取り入れようという動きも出ている。
上海に近い地域から来た人ならば1~3ヶ月で、上海から離れた地域から来た人でも3~6ヶ月で上海語が聞き取れるようになるというが、外国人の私は上海に来てから 1年以上たった今でも、一部の簡単な語彙しかわからない。未だに上海人の同僚たちが何を討論しているのかさっぱりわからない有様である。そこで私は、「シャンハイレン(普通語の「上海人」)」から「サンヘニン(上海語の「上海人」)」へとレベルアップするため、上海人の元同僚に家庭教師となってもらい、本格的に上海語の勉強を始めることとした。
上海語の声調(アクセント)は5段階ある。以前は6~7段階あったのだが、現在では簡略化されてしまっているのだとか。連続声調と言って、2つ以上の言葉を組み合わせた場合、その組み合わせによって声調が複雑に変化する。上海語では、普通語の「拼音(ピンイン)」のような発音記号が体系化されおらず、国際音標符号やローマ字表記などが存在する。『今すぐ話せる上海語 入門編』では、上海語の子音は24個あって、普通語にあるそり舌音がない代わりに濁音が存在し、母音は37個(単母音、二重母音、鼻音母音、声門閉鎖母音の4種)あるとなっている。しかし国際音標符号を用いた他の書籍では、子音が28個、母音が22個となっている。
とにもかくにも、普通語のように体系的なカリキュラムがあるわけでもなく、そもそも公用語としてあるいは書き言葉として使用されているわけでもないので、直に上海語に触れて耳と口で言葉を覚え、「サンヘニン」たちとコミュニケーションを取れるようになればそれでいい。
以下、参考までに普通語と上海語の単語比較を記しておく。
こんにちは
・你好(nǐ hǎo,ニーハオ)
・侬好(nong3 hou3,ノンホー)
ありがとう
・谢谢(xiè xiè,シェシェ)
・谢谢(xia3 xia3,シャージャー)
すいません
・对不起(duì bù qǐ,ドゥイプチー)
・对勿起(thei2 vak5 chi2,ディーヴァチィ)
私は日本人です
・我是日本人(wǒ shì rì běn rén,ウォーシーイーベンレン)
・我是日本人(ngo3 zu3 zak5 phen2 nin3,ンゴーズサッペンニン)
上海語
・上海话(shàng hǎi huà,シャンハイホワ)
・上海闲话(zang3 hei2 hei3 ho3,サンヘエーウー)
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関連リンク:
・「中国情報局」の「中国語学習-中国語とは?」
・「ALA!中国」の「中国の七大方言」
・戴文捷/著『今すぐ話せる上海語 入門編』
・田島英一/著『上海 大陸精神と海洋精神の融合炉』


> けまんそうさん
食事は基本的に外食で、確かに日本料理より油は多いですが、胃を悪くしたということはありません。下痢をしたことは何度もありますが・・・。
上海での食事に関しては、また別のエントリーに書きたいと思っています。
投稿情報: ユエカン(管理人) | 2006-09-27 22:41
普通語と上海語とはずいぶん違いますね。
私たちが津軽弁を聞いても 何をいっているのか
分からないより
もっと 違うようですね。
上海語を 早くマスターするともっと世界が開けるでしょうね.
ところで お食事はどうしておいでなのでしょうか
油こいものが多くて 胃が悪くなったと
よく聞きますが...
投稿情報: けまんそう | 2006-09-22 22:38
はじめまして、上海在住2年目のものです。
そんな本があったんですね。さっそくAmazonで注文してしまいました。
上海語、出来ると便利だなーとは思いつつ、なあなあにしてましたが、これをきっかけに学べたらと思います。
ご紹介ありがとうございました。
投稿情報: Kenta | 2006-09-20 09:10