私の両親は、上海でこの数日間、日本化していない中華料理を満喫したり、中国人同士の会話が口論に見えたり、愛想の悪い店員に腹を立てたり、暴走するタクシーや満員の路線バスに乗ったり、病院にかかったりといろいろな経験をしてきたが、ついに帰国する日がやってきた。
上海から富山へ向かう便は、スケジュールを決めた人間をど突いてやりたくなるような、早朝7:20の離陸である。この時間では空港バスもリニアモーターカーも、ホテル専用の送迎バスも走っておらず、タクシーを飛ばすしか方法がない。浦東のホテルから130元かかった。
浦東空港にて無事両親を送り出し、帰宅してもう一眠りしていると、12時近くになって母親から電話が掛かってきた。海外専用のレンタル携帯からだったのでおかしいなと思ったら、両親の乗った飛行機が天候不順のために富山空港へ降りられず、浦東空港へ引き返して来たのだという。私自身にそんな経験がないので、「とにかく航空会社の説明を聞いて」とアドバイスしたのだが、その後あらためて「何がどうなっているのかよくわからない。お願いだから早く来て!」とSOS電話が入ったため、急いで浦東空港へ駆け付けるはめとなった。
空港に着いて両親を見つけると、私は早速上海航空の係員を探し、話を始めた。次の富山便は明後日の5日にならないと飛ばないとのことだったが、翌日の関西空港行きへの切り替えが可能だという。私は両親の同意を得て、早速その場で関空行きへと切り替えてもらうことにした。
だが、飛行機が上海へ引き返したのは天候不順が原因で、航空会社側に何らかの落ち度があったというわけではないため、関空から富山への交通費と今夜の宿泊費用を賠償することはできないという。賠償どうこうは、この現場のお姉さんが判断できる問題でなかろうし、私ひとりだけこの場で文句を言っても航空会社の規定を覆せるわけでもなかろう。そこで私は、賠償の問題はあきらめ、どうして乗客に対してきちんとした説明がなかったのかだけでも問うことにした。
私は尋ねた。
「あなた方の会社には、日本語を理解する人がいないの?」
「私、英語が話せますよ」
要するに彼女は、“英語で”きちんと状況を説明したと言いたいのだ。しかし、富山からやって来た日本人乗客のうち、一体どれだけが英語を解せると思っているのだろう。そう伝えたのだが、「あなた、日本語できるじゃない?」とあっけらかんとしたものである--思わず、「私は日本人だ!」と怒鳴ってしまった・・・。実際、関空便へ無料で切り替えられることを、両親はまったく理解していなかった。両親は、状況を中国語ができる人からまた聞きのまた聞きしただけである。
彼女からは「日本語のできる人は、今日休みです」とのフォローは入ったものの、そんな言い訳で事態が改善できるわけではない。翌々日のチケットへ切り替えられたものの、多くの乗客が次にどうしたらいいかわからず右往左往しているではないか。
状況の説明はしたし、乗り換え便の手配はしたので、私たちにはもう関係ないという姿勢が問題なのだ。この係員にはそのことがまったく理解できていない。誰もが気軽に海外へ旅行できるようになっているなか、現地の言葉や英語が話せない海外旅行初心者が大勢いて当然であり、そうした旅行者に対しては航空会社や旅行会社がしっかりとフォローしなくてはならない。お金や賠償の問題ではない。日本語ができるスタッフがいることだけでは不足だ。日本人旅行者の心を理解できるスタッフがいなければならない。
だが私は、日本人乗客の方にも問題があると考えている。両親に聞くところによれば、翌々日の振替便チケットを受け取った後、ツアー客はガイドに案内されて、残りの客も訳がわからぬままに三々五々その場を離れていったという。言葉が通じず、詳しい状況の説明もなく、大いに不満や不安を感じているにもかかわらず、そうした不満や不安を航空会社側に伝えていないのである。後から駆け付けた乗客でもない私がいくら抗議しても、まったく説得力などありやしない。・・・
中国では、というより一歩日本を出たら世界中どこでも、心の中で思っていることをはっきりと相手に伝えないと相手は理解してくれない。こんなことぐらい対応してくれるだろうとのんびり構えていてはいけない。大いに不満に思っているなら、なぜ面と向かって言わないのか?
これは、単純に言葉が通じる通じない問題ではない。言葉が通じなければ、中国語か英語のわかる人を立てて団体交渉したらよいのである。「今すぐ日本に帰せ!」という要求は非現実的であっても、「全員にホテルの部屋を用意しろ!」ぐらいの要求はできるはずである。そうすれば、航空会社側にも事の重大さを知らしめることができただろう。小は自分たちの安全と利益を守ることになり、大は将来上海航空を利用する乗客が快適に空の旅を満喫できることになる。
中国人はしばしば日本人のことを「団結力のある民族」と評す。だが、三々五々その場を離れいく日本人乗客には「団結力」などまるで見出せない。団体交渉という点では、むしろ中国人を見ならうべきだろう。普段は愛国心よりも自分の利益を優先させるくせに、差別待遇を受けたと感じるととたんに団結力を発揮し、民族の誇りを取り戻す。ご都合主義的だが、自己防衛という点では理に適っている。
結局のところ、上海航空はまだまだ日本路線に不慣れなのだ。機内サービスの質も高いとは言えず、日本語案内はめちゃくちゃで、海外旅行初心者に薦められる航空会社ではない。今回のような突発的な事態への対応については、何をか况わんやである。
富山-上海便は、同じ北陸にある小松空港や新潟空港に対抗してどうしても上海便を就航させたかった富山県と、後発発進ではあるが日本路線への進出を加速させたい上海航空との妥協の産物だ。それで損をするのが、海外旅行に不慣れな乗客であってはならない。
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<追記>1/14
後日、中国人の友人たちとおしゃべりをしていた際、この事件について話をした。当日の宿泊費や日本国内の交通費が保証されなかったことも話したが、航空会社の係員は面倒なことになるのを嫌がって適当なことを言う可能性があるので、ちゃんとそうした規定があるのか文書を見せるよう要求した方がよいとのアドバイスをもらった。私は当時、係員のお姉さんの言う規定とやらをそのまま信じてしまっていたが、やはり私はまだまだ「日本人」で、抗議の仕方が下手くそだったかなと反省した。


私も別な航空会社でトラブルに遭遇した事が
あったんですけど前回上海に行く時でしたが
ちょうど私は東京~広州のチケットを持っていて
広州からそのまま乗り継ぎ虹橋へ行こうと思い
中国の知人に頼んで某航空会社に電話予約して
受け取りは空港のカウンターと言うことで
さっそく到着後カウンターに行って名前を言うと
予約が全てキャンセルしていたのです。
私が詰め寄ると係員が上海の事務所と
連絡が取れず予約できなかったと言うので
もう一度その場で予約をし直してもらい
もちろん料金も変わらなかったので余計に事を大きくするのも嫌だったのでその場を立ち去ったのですが今思えばもし混雑期とかだったり重要な仕事だったら大変な事になっていたのでそう思うと運が良かったと自分では思います。
投稿情報: shichuanzhao | 2006-01-16 12:47
ご両親様はじめての海外旅行で大変な目に遭ってしまいましたね。
良くも悪くも生の中国を経験することができたのは、それはそれで良かったのではないかとも思います。他人事で恐縮ですが。
この記事を中国BLOG記事アーカイブプロジェクトに推薦させていただきました。
http://www.chinawalkers.net/modules/weblog/details.php?blog_id=123
投稿情報: まかぼろ | 2006-01-05 11:48