香港の衛星テレビ局【凤凰卫视(フェニックステレビ)】の人気番組『时事辩论会(時事討論会)』は、日本のテレビ朝日と協力し、靖国神社や歴史教科書など日中両国間の“敏感”な問題についての討論会【破局之辩(ここでの「破局」とは「打破僵局」のことで、「行き詰まりを打開する」という意味)】を放送した。日本側から『朝まで生テレビ』や『サンデープロジェクト』などでお馴染みの田原総一郎氏と元首相補佐官の岡本行夫氏を迎え、中国側から中国社会研究院研究員の馮昭奎氏とフェニックステレビ論説員の何亮亮氏が迎え撃った。
司会者はまず、日本側の両氏に戦争当時の記憶について質問した。田原氏は幼い頃に隣人を兵隊として送り出した光景を語り、戦争終結の年に生まれた岡本氏は、大部分の日本人はあの戦争がよくないものであったと認識し、恥ずかしく思っていると答えた。
最初のテーマは、靖国参拝問題であった。田原氏と岡本氏が、靖国神社には240万を数える戦死者が祭られており、小泉首相は二度と戦争をしないという決意のもとに参拝しているし、また戦犯が祭られていることに対しても、日本にどんな悪人でも死んだ後は神として祭られる文化があると主張した。一方馮氏は、叔父の祭られている岡本氏が靖国を参拝することは理解するが、小泉首相は日本の指導者であり、その指導者が参拝することは戦犯に対して敬意を払うことであり、侵略戦争の被害者として絶対に容認できないと反論した。また、広島に原子爆弾を落とした爆撃機がアメリカで展示された時、日本人はこれをアメリカの国内問題と考えず抗議しているのであり、靖国問題などを100%の国内問題として片付けることはできないとも主張した。
歴史教科書問題で、日本側はこれまでの日本の教科書があまりに偏っていたことや、扶桑社の教科書の採択率は1%にも満たないことを挙げ、また中国側の主張する日中戦争の犠牲者数が、当初の400万人から2500万へと膨れあがっていることに疑問を呈した。馮氏は、外務大臣が歴史教育は明治維新までとすればよいと発言したこと、教学大綱(学習指導要綱?教師用の指導書?)において「侵略」をたんなる「進出」として片付けようとしていること、文部大臣が従軍慰安婦となったのはとても光栄なことだったと述べたことを挙げ、歴史認識の「誤り」を非難した(注:前の2点ついては事実関係を確認できなかった)。意見の一致したのは、日中両国の歴史学者が一緒になって近代史を研究するべきだということであった。最後に馮氏は、歴史問題は日中関係の「入口」ではなく「出口」であり、歴史問題を解決すれば日中関係が全面的に発展するわけではなく、他にも数多くの問題があるのであり、日中の政治家が会うたびに歴史問題ばかりを語り合うのは正常ではないとまとめた。
東シナ海の天然ガス田開発については、田原氏は日本政府の対応について、過去に日本の外務省が中国を慮って開発を許可して来ず、中国側が開発する段になって急に慌てたものであると弁解した。一方馮氏は、中国の開発は日本の主張する中間線の中国よりで行われており、日本の反応は強行に過ぎると批判する。この問題で、日中はけんかをしてはいけないということで双方は一致した。
また、司会者は視聴者のFAXを引用しながら、日本の右翼は日中友好の妨げになっているのではないかと質問した。田原氏は日本には言論の自由があり、脅しや殺人でこの自由を侵害しない限り、たとえ右翼の思想といえども制止することはできないし、また日本の番組司会者の多くは日中友好を支持していると反論した。一方で何氏は、石原慎太郎氏のの名前を挙げ、日本で一番大きな都市の知事である彼の強硬な反中発言が日中関係に及ぼす影響は計り知れないと主張した。
討論も後半に入る頃、馮氏は以下のように日中関係を総括した。2002年から現在までの日中関係は政治関係において“Lose-Lose”であり、今後この関係がどちらか一方の“Win”となることはなく、“Win-Win”(日中国交正常化以降のような関係)となるか引き続き“Lose-Lose”(政冷経冷)になるかの分かれ目にあるとした。
その後、話は台湾問題にも及んだ。岡本氏が、台湾の将来の地位は両岸の中国人が平和的に協議することによって解決されるべきであり、日本はその平和的協議の結果を支持すると述べた。馮氏は一部の自民党議員が台湾独立を支援していると非難し、何氏は岡本氏の主張は日本の外交官の話を聞いているような妥当なものだとした上で、日本の一部の議員が台湾に対して“同情”しており、日米安保を利用して、アメリカが台湾独立を支持すれば日本も支持するのではないかと懸念を表明した。
日本と過去を真摯に反省したドイツとの比較にも話が及んだ。何氏は、ドイツが戦争責任を徹底的に謝罪反省したこと、敵国同士だった独仏両国が現在では非常に友好的な関係にあることを挙げ、日本もドイツのように過去を全面的に反省できないのかと問い質した。田原氏は、日本が中国を侵略をしたのは確かに悪かったことだが、ドイツにはヒトラーという独裁者がいて、ユダヤ民族そのものを抹殺しようとしていたのとはちがうため、一概に比較できないと反論した。
また田原氏は最後に、日中の貿易関係はすでに日米を上まわっており、右翼が何と言おうとも日中関係が重要であることにちがいはないと総括した。
この90分にわたる討論会は、その他に政冷経熱の現状やODA、台湾問題についても話が及んだものの、テーマの幅が広すぎたこともあってか、散漫で深みのないものとなり、とても相互理解を深まったとは言えなかった。田原氏は、初めて中国のテレビ番組で討論するために遠慮もあったのだろうか、自らの司会する番組でのような歯切れの良さはなかった。靖国や歴史教科書に関する反論も、政府の公式見解を聞いているようで、中国人はおろか私が聞いても納得のいく説明ではなかった。中国側は、日本研究の専門家である馮氏が興奮気味に、日本の中国に対する強硬な対応や小泉首相のわがままを非難していたのに対し、何氏は落ち着いた口ぶりで日本の論客に鋭い質問を浴びせていたのが印象的だった。
何はともあれ、日中両国の著名な論客が直接討論を行う機会を得られたことは評価できる。相互誤解と相互不信が拡大する現状の日中関係においては、それぞれの国内で相手の国を非難するのではなく、膝を突き合わせて、時に感情的なけんかになることがあったとしても、じっくりと話し合うことがなによりも重要だからである。
*テレビ朝日『サンデープロジェクト』での放送は8月21日。
*中国語のわかる人は、こちらから視聴が可能。発言全文も掲載されている。
评论-最新コメント